話を聴く時に大切になってくるのが相手と共感できるかどうかだと思います。ところが世間には共感に似た「同感」という言葉があります。この違いはなんでしょう?「同感」とは自分と同じ価値観、意見を持った相手に対して同意をすることです。簡単にいえば「わかるわかるー!わたしもー!」というような反応のことです。
では「共感」とはどういうものなのでしょう?共感とは話し手の気持ちを同じ人間として理解しようとする態度のことです。自分の気持ちではなく、相手の気持ちに寄り添いながら、自分が感じていることを示すことになります。そうすると「わかってもらえた」という気持ちが加速して、相手はさらに続きを喋ってくれるでしょう。
『プロカウンセラーの共感の技術』の著者杉原保史さんは、「共感」が深まるとは次のようなことであると述べています。
“共感は、個人の境界線を越えてあなたと私の間に響き合う心の現象、つまり、「人と人とが関わり合い、互いに影響し合うプロセス」のことなのです。ですから、共感は、ただ相手とぴったりと同じ気持ちになることを指すわけではありません。むしろ、互いの心の響きあいを感じながら関わっていくプロセスであり、それを促進していくための注意の向け方や表現の在り方などを指すものです。”共感が深まる”とは、相手の気持ちと自分の気持ちとの境界線がぼやけることです。あるいは、相手の気持ちと自分の気持ちとが出会い、相互作用することです。“と述べられています。
今21世紀になってグローバル化やデジタル化が急速に進み、社会は再び大きく変わろうとしています。国家という枠組みが存在感を薄め、個人の独自性や能力が問われる時代が到来しました。個人の考えや主張はもちろん大切です。しかし、社会のニーズに合わない、組織の中で自分勝手な主張や行動は通じないでしょう。そこは自分たちで考えていかないといけないと思います。自分は何をやりたいのか、それは社会に役立つことなのか。
これからの時代をよりよく生きていく上で必要なモノは何かを考えた時、素晴らしい個性を大切にしながら、社会と共生するには「エンパシー(共感)」が大事だと言われる方がたくさんいます。私もそのように思っています。経済学の祖、アダム・スミスは人間にとって大切なモノは「シンパシー(同感)」だと主張しました。しかし、多くの人とつながるネット社会ではさらに進んで「共感」する。「共感できる」人が大きな成長を遂げていくのではないかと考えています。
本校の生徒達には「共感」と「同感」の違いを認識して、英語や国語などの知識はもちろん、今世界や日本で起きている事に目を向け、そこから多くの事を学んでいって欲しいと思っています。自分の視線を外に向けいろんな人とのかかわりの中で「共感」を得る事で新しい発想や経験を積んでいってください。そういった経験を重ねる事で生きる力を身に付け、課題を発見する力や問題を解決する力を身に付けていって欲しいと考えています。