今年の1月11日大学ラグビーの決勝戦が行われました。高校・大学そして社会人でラグビーをしていた私は特別な思いでこの試合を見ていました。それは早稲田大学と天理大学の関東対関西の対決だからではなく、去年8月には天理大学ラグビー部は60名以上が新型コロナウイルスに集団感染し、大変つらく苦しい時間を過ごしておりそのチームがここまで勝ち上がってこれた要因は何か?それを見る事が大きな目的でした。試合は終始天理大学が主導権を握り天理大学が55対28で早稲田大学を下し、初優勝を果たし、実に36大会ぶりの関西勢の優勝となりました。
どん底のチームが日本一になれた要因。それはスキルやフィジカルだけではなく圧倒的な形で早稲田大学を制した松岡主将のインタビューから理解が出来ました。彼は「ありがとうございまーす!めっちゃくちゃうれしいです!」正に絶叫と言えるほどの大きな声で、素直な感情を言葉にしていました。 最近は大学生でも、それこそ高校生でも、冷静に言葉を選んでインタビューに応じる場面をよく目にしますが、松岡選手のインタビューは愚直なほどの直球で自分の感情を表現していました。インタビューに応える間も、涙がほほを伝って落ちていきます。その涙をぬぐうこともせず、はっきりと思いを言葉にしていました。「いろいろあったが、1年間我慢して、いろんな方にサポートしてもらえたおかげでここまで乗り越えてこれたと思う」と松岡主将。そして最後にもう一度、「ありがとうございましたー!」と大声で叫んでインタビューは終わりました。
TEAMが苦難を抱えている時、ピンチの時、この松岡選手が代表するように選手一人一人がひたむきに、謙虚な気持ちで前を向いていく姿勢が大切だということを改めて思い知らされました。そこには格好いい姿も、スマートな言葉もいらない。素直にまっすぐに、明るく前を向いて進んでいくことこそ、一番必要だということを思い出させてくれました。
日本には古くから、謙虚さを象徴する格言として「実るほどに首(こうべ)を垂れる稲穂かな」という教えがあります。知識や経験を積み人間的にも高いレベルに達すると、中身の詰まった稲穂がその重さで自然に頭を垂れるように、人間も抵抗なく謙虚な姿勢をとれるようになるものだ、という意味であります。「権利は主張しても義務は果たさない」という傾向が強くなると、人間関係がぎこちなくなり、自分の事だけ優先して行動し、小さな事でトラブルに発展することが多くなるものです。相手を思いやり、共感や協調の態度が大切にされ、常に謙虚な姿勢を持てる人が増えていけば、お互いに気持ちの良い毎日を送ることができるようになることでしょう。
ボランティア活動で有名になった尾畑春夫さんがボランティアに対する自らの理念を素晴らしい言葉で表現されました。それは「かけた情けは水に流し、受けた恩は石に刻め」というものでした。仏教用語とされていますが、被災者のために自分は全力を尽くすが、一切の見返りを受け取らない、という強い信念を表すものでした。その謙虚さと相手を思いやる尊い精神に、頭の下がる思いがしました。
この様に人の心を動かすのは「謙虚さ」と「前向きな姿勢」を感じることが出来る行動だと思っています。その行動があるからこそ一人一人が心を洗われ気持ちを落ち着かせ、勇気と元気をえることが出来ると思います。これからもそのような気持ちと行動を心がけ、 先のことを考えれば不安は尽きませんが、一人一人が今できることに全力を注いでいくことで、自分の進むべき道が開けていくはずです。