【山に登るルートはたくさんあるのだから、自分の成功体験を押し付けてはいけない。】この言葉は“イチロー選手の育ての親”と称された日本プロ野球会の名将と呼ばれる仰木 彬監督の言葉です。
私も長年スポーツを指導してきましたがこの言葉を知った時心に残ったのを今でも覚えています。一人ひとりいろんな成功体験や失敗体験を繰り返しながら少しずつ前に進んで行きます。特に成功体験は自分にとって大切な『糧』となって次の挑戦に大きな勇気とパワーを与えてくれます。そういった体験や経験が積み重なり自分自身のスタイル、形ができあがっていきます。 効果としても実感できているので大きな自信となって自身の心に残ることになります。
教師として、またスポーツの指導者として生徒達を指導するとき、自分のそのスタイルを生徒達に押し付けていないかを気付かせてくれたのもこの言葉でした。十人十色という言葉があるように目の前の生徒には人それぞれ感覚が違います。もし当時の自分と限りなく近い状況であったとしても、登場人物やタイミングが違えば全く別の話であり、当然ですが結末も変わるということを必ず理解しておかなければいけないことです。
実体験からのアドバイスは、受け手からしても非常に説得力があり、参考にしやすいとは思いますが『だから同じようにしなさい(これが正解)』といったニュアンスで伝わってしまうと、良かれと思って伝えたことが成功・成長・解決の『手伝い』ではなく『押し付け』になってしまいます。これではアドバイスを与える側も受ける側も全く意味が無くなってしまいます。
ラグビー部ハーフタイム |
非常に複雑で微妙なところではありますが、生徒達は完全にヘルプサインを出している状態であることが考えられるため、やはりこれはアドバイスを与える側が注意すべきところだと私自身も改めて肝に銘じました。『じゃあ何も伝えられない』と思った事もあります。しかし、目の前の生徒や仲間が悩んでいればなんとかしてあげたいと思うのは自然なことです。誰一人として完璧な人はいません。本当は正しかったとしても『今は正しくない…』と感じることだってあります。まずは一緒に考える、一緒に悩むことから始めてみようと思いました。
女子バスケ試合前 |
とにかく話を聞いて想いを共有し理解しようとする。それだけで元気になってくれることも少なくありません。相手の気持ちを読み取り、寄り添い、共に進むことです。互いに支え合うこと、相手を思う気持ちこそが成功・成長・解決の一番の特効薬なのかもしれません。手っ取り早く答えを探すのではなく、試行錯誤を繰り返すことも自分の基本づくりにおいて重要なことなのだと思います。